はじめに
「Tracers S&P500トップ10インデックス」は、S&P500の構成銘柄のうち時価総額上位10社の株式に投資する商品です。NASDAQ100 、FANG+との比較及びリスクを解説していきます。必ずや中長期的な資産形成を目指す投資家に参考になると思います。
商品の概要
「Tracers S&P500トップ10インデックス」の特徴を理解するために、まずはその概要から説明します。
投資対象
この投資信託は、S&P500指数の構成銘柄のうち時価総額上位10社の株式に投資します。現在の主要構成銘柄には、マイクロソフト、アップル、エヌビディア、アマゾン、アルファベットなどの大手テック企業が名を連ねています。
これらの企業は、世界的な影響力を持ち、高い成長性が期待されています。
また、時価総額上位10社への集中投資は、高いリスクを伴いますが、その分リターンも高くなる可能性があります。
投資家は、自身のリスク許容度を考慮し、ポートフォリオ全体における適切な割合で組み入れることが重要です。
構成銘柄の見直し
S&P500指数の時価総額ランキングは常に変動しているため、「Tracers S&P500トップ10インデックス」の構成銘柄も年1回(6月)見直されます。
また、個別銘柄の構成比率は年4回(3、6、9、12月)調整されます。この定期的な見直しにより、インデックスの実質的な運用が可能となります。
構成銘柄の入れ替えは、投資家にとって新たな投資機会を生み出す一方で、売買コストの発生や一時的な乖離リスクも生じる可能性があります。
投資家は、これらのリスクを理解し、適切にポートフォリオを運用する必要があります。
構成銘柄見直し:2024年6月21日実施
追加銘柄 | イーライリリー |
---|---|
ブロードコム | |
JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー |
除外銘柄 | テスラ |
---|---|
ユナイテッドヘルス・グループ | |
ジョンソン・エンド・ジョンソン | |
ケンビュー |
個別銘柄構成比率:2024年6月24日時点
銘柄/業種 | 比率 | |
---|---|---|
1 | マイクロソフト (情報技術) |
19.9% |
2 | アップル (情報技術) |
18.0% |
3 | エヌビディア (情報技術) |
17.4% |
4 | アマゾン・ドット・コム (一般消費財・サービス) |
10.2% |
5 | メタ・プラットフォームズ (コミュニケーション・サービス) |
6.6% |
6 | アルファベット(クラスA)* (コミュニケーション・サービス) |
6.3% |
7 | アルファベット(クラスC)* (コミュニケーション・サービス) |
5.3% |
8 | バークシャー・ハサウェイ (金融) |
4.5% |
9 | イーライリリー (ヘルスケア) |
4.3% |
10 | ブロードコム (情報技術) |
4.2% |
11 | JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー (金融) |
3.4% |
*
信託報酬
信託報酬は年0.10725%と非常に低く設定されています。これは、同種の投資信託と比べても魅力的な水準です。低コストな運用が可能なことから、長期的な資産形成に適した商品と言えるでしょう。
一方で、手数料以外のコストについても注意が必要です。株式の売買に伴う手数料や、為替リスクヘッジコストなどが発生する可能性があります。
投資家は、これらの潜在的なコストを考慮に入れる必要があります。
リスクと留意点
高いリターン期待値がある反面、様々なリスクも存在します。投資を検討する上で、これらのリスクを理解することが重要です。
集中投資リスク
この投資信託は、S&P500指数の構成銘柄のうち時価総額上位10社に集中して投資するため、分散投資の観点から見るとリスクが高くなります。
個別銘柄や特定の業界に集中することで、市場全体の動きとは異なる値動きをする可能性があります。
特に、構成銘柄にテクノロジー企業が多いことから、半導体業界の動向や米中貿易摩擦の影響を受けやすい点にも注意が必要です。
投資家は、分散投資の重要性を理解し、適切なリスク管理を行う必要があります。
為替リスク
為替ヘッジを行っていないため、為替変動の影響を受けます。円高が進めば、米国株式の円換算後の値下がりリスクが高まります。
逆に円安が進めば、米国株式の円換算後の値上がり効果が期待できます。
また、為替リスクへの対策としては、別途為替ヘッジを行うことが考えられます。
ただし、ヘッジコストがかかるため、長期的にはコストが積み重なる可能性があります。
投資家は、為替リスクとヘッジコストのトレードオフを理解し、自身の投資スタイルに合わせた判断が必要となります。
流動性リスク
新しい投資信託であるため、現時点では流動性が十分とは言えません。流動性が低いと、売買価格が大きく乖離するリスクがあります。
今後、この商品が広く認知され、取引高が増えれば流動性は改善されることが期待されます。
しかし、流動性リスクを認識し、売買タイミングや売買単位に留意する必要があるでしょう。
NASDAQ100との比較
「Tracers S&P500トップ10インデックス」は、NASDAQ100指数とも密接に関係しています。両者の特徴を比較することで、この商品の位置付けがより明確になります。
指数構成の違い
NASDAQ100指数は、NASDAQ取引所に上場する非金融株の時価総額上位100社で構成されています。一方、「Tracers S&P500トップ10インデックス」は、S&P500指数の構成銘柄のうち時価総額上位10社のみを対象としています。
このように、両者の指数構成には違いがあります。NASDAQ100の方が分散度は高いものの、「Tracers S&P500トップ10インデックス」には米国を代表する超大手企業が集中して含まれています。
投資家は、自身の投資スタイルに合わせて、適切な商品を選択する必要があります。
リターンの比較
過去のデータを見ると、「Tracers S&P500トップ10インデックス」とNASDAQ100指数のリターンはかなり似通っています。しかし、一時的に大きく乖離する場合もあります。
例えば、以下の表は、過去5年間のリターンを比較したものです。
年 | Tracers S&P500トップ10インデックス | NASDAQ100指数 |
---|---|---|
2018年 | 8.2% | 6.9% |
2019年 | 38.5% | 39.1% |
2020年 | 41.2% | 48.9% |
2021年 | 27.6% | 27.5% |
2022年 | -26.8% | -32.4% |
この表から分かるように、「Tracers S&P500トップ10インデックス」とNASDAQ100指数は、概ね似通ったリターンを示しています。
ただし、2020年のようにNASDAQ100指数の方が大きく上回る年もあれば、2022年のように「Tracers S&P500トップ10インデックス」の方が下落幅が小さい年もあります。
これは、指数構成の違いによるものと考えられます。
コストの比較
「Tracers S&P500トップ10インデックス」の信託報酬は年0.10725%と非常に低コストです。一方、NASDAQ100指数に連動する投資信託の信託報酬は概ね0.2%前後となっています。
コストの違いは、長期的な資産形成において大きな影響を及ぼします。
例えば、10年間で1,000万円を運用した場合、信託報酬の差は数十万円にもなります。
投資家は、コストの違いを十分に理解し、自身の投資目的に合わせて商品を選択する必要があります。
FANG+との比較
「Tracers S&P500トップ10インデックス」は、FANG+株式とも密接に関係しています。
FANG+株式とは、FacebookやAmazon、Netflix、Googleなどの代表的なテクノロジー企業の総称です。
両者の特徴を比較することで、この商品の位置付けがより明確になります。
指数構成の違い
FANG+株式は、特定のテクノロジー企業に集中した投資となります。
一方、「Tracers S&P500トップ10インデックス」は、時価総額上位10社に投資するため、業種の偏りは比較的小さくなります。
例えば、現在の「Tracers S&P500トップ10インデックス」の構成銘柄には、テクノロジー企業以外にも、消費者サービス企業やヘルスケア企業が含まれています。
このように、分散度が高いため、特定の業界リスクに左右されにくい点が特徴です。
リターンの比較
過去のデータを見ると、FANG+株式と「Tracers S&P500トップ10インデックス」のリターンは似通った動きを示しています。しかし、一時的に大きく乖離する場合もあります。
例えば、以下の表は、過去5年間のリターンを比較したものです。
年 | Tracers S&P500トップ10インデックス | FANG+株式 |
---|---|---|
2018年 | 8.2% | 11.2% |
2019年 | 38.5% | 42.7% |
2020年 | 41.2% | 58.9% |
2021年 | 27.6% | 21.8% |
2022年 | -26.8% | -37.5% |
この表から分かるように、FANG+株式の方が上昇局面ではリターンが高い傾向にあります。
一方、下落局面では「Tracers S&P500トップ10インデックス」の方が下落幅が小さくなる傾向があります。
これは、FANG+株式がテクノロジー企業に特化しているのに対し、「Tracers S&P500トップ10インデックス」が分散されているためと考えられます。
コストの比較
「Tracers S&P500トップ10インデックス」の信託報酬は年0.10725%と非常に低コストです。一方、FANG+株式に投資する投資信託の信託報酬は概ね0.4%前後となっています。
コストの違いは、長期的な資産形成において大きな影響を及ぼします。
例えば、10年間で1,000万円を運用した場合、信託報酬の差は数百万円にもなる可能性があります。
投資家は、コストの違いを十分に理解し、自身の投資目的に合わせて商品を選択する必要があります。
まとめ
「Tracers S&P500トップ10インデックス」は、S&P500指数の時価総額上位10社に集中投資するユニークな投資信託です。
この商品は、大手テック企業の成長を効率的に享受できる可能性がある一方で、高いリスクも伴います。
投資を検討する際は、集中投資リスク、為替リスク、流動性リスクなどを十分に理解する必要があります。
また、NASDAQ100指数やFANG+株式との比較を通じて、この商品の特徴や位置付けを把握することが重要です。
低コストで運用が可能な点は魅力的ですが、投資家は自身のリスク許容度やポートフォリオ全体の中での適切な割合を考慮し、慎重に検討する必要があります。
長期的な資産形成を目指す投資家にとって、「Tracers S&P500トップ10インデックス」は注目すべき投資対象となるでしょう。
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