テクノロジー企業への投資は常に大きな関心を集めており、その一つが新設定のZテック20です。
そのZテック20(iFreePlus 世界トレンド・テクノロジー株)について、多くの共通点から、先に設定されたS&P500トップ10との比較でパフォーマンスがほぼ同じになるのではないかと議論になっています。
ただ、両ファンドには決定的な違いが存在します。その違いによってパフォーマンスへどう影響してくるのかについて考察していきます。
記事のポイント
- Zテック20とS&P500トップ10のパフォーマンスがほぼ同じとの意見の理由
- 両ファンドは決定的な違いが存在する
- それぞれの投資に向く人
1. Zテック20とS&P500トップ10のパフォーマンスはほぼ同じ?
筆者はZテック20とS&P500トップ10に決定的な違いが存在すると記しましたが、似たようなパフォーマンスになるだろうと多くの投資家の意見があるのも事実です。
まず、なぜパフォーマンスが同じくらいになるとの議論があるのか、両ファンドの比較表を通じてその理由を詳しく見ていきましょう。
Zテック20 | S&P500トップ10 | |
設定日 | 2024年12月11日 | 2024年5月16日 |
銘柄数 | 20銘柄 | 10銘柄 |
信託報酬 | 0.495% | 0.10725% |
算出法 | 時価総額加重 | 時価総額加重 |
銘柄入替 (原則) |
3月 9月 | 6月 |
新NISA | 成長投資枠 | 成長投資枠 |
ベンチマーク | なし | S&P500トップ10指数 (税引後配当込み、円換算ベース) |
投資先 | グローバルなテクノロジー関連企業 (日本、中国、ロシア除く) |
米国 |
次に、下図のZテック20とS&P500トップ10の上位の構成銘柄比率を詳しく見ていきましょう。
(Zテック20の上位10銘柄を記しています)
Zテック20 * | S&P500トップ10 * | |
アップル | 17.3% | 19.5% |
マイクロソフト | 15.6% | 17.2% |
エヌビディア | 14.5% | 18.2% |
アルファベット | 10.0% | 9.9% |
アマゾン・ドット・コム | 9.5% | 10.5% |
メタ・プラットフォームズ | 7.1% | 6.8% |
テスラ | 4.1% | – |
ブロードコム | 3.9% | – |
TSMC | 3.8% | – |
オラクル | 2.3% | – |
* Zテック20は、2024年9月末時点(シュミレーション)の比率
* S&P500トップ10は、2024年11⽉末時点の比率
両ファンドとも上位3銘柄は、アップル、マイクロソフト、エヌビディアで共通です。
この上位3銘柄比率はZテック20は47.4%、S&P500トップ10は54.9%になります。
共通の上位3銘柄(アップル、マイクロソフト、エヌビディア )に加え、
アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ(こちらも共通銘柄)を加えた上位銘柄も構成比率が大きくなっています。
これらの上位銘柄の合計比率は
- Zテック20:約74.0%
- S&P500トップ10:約82.1%
となっており、構成比率は70%から80%にもなることなどかなりのウエイトを占めるとともに、時価総額加重で算出している点も同じです。
このようなことからZテック20とS&P500トップ10は、同じようなパフォーマンスになるだろうと予想する投資家が多く存在します。
2. iFreePlus 世界トレンド・テクノロジー株(Zテック20)とは
「iFreePlus 世界トレンド・テクノロジー株(Zテック20)」は、日本を除く世界のテクノロジー関連企業から 時価総額上位の20銘柄に投資することを目的としています。
Zテック20について詳しくは、こちらをご覧ください。
3. Tracers S&P500トップ10インデックスとは
S&P500トップ10は、⽶国の⾦融商品取引所に上場する株式に投資を⾏ない、S&P500指数の構成銘柄のうち時価総額上位10社の株式に投資します。
S&P500トップについて詳しくは、こちらをご覧ください。
最近多くの投資家で議論中のZテック20とS&P500トップ10ですが、両ファンドは多くの共通点がある一方、違いも存在します。
4. Zテック20とS&P500トップ10の決定的な違い
決定的な違いとして両ファンドの銘柄の採用基準があげられます。
その詳細を見ていきましょう。
S&P500(トップ10)の銘柄採用基準
まず、S&P500トップ10は、S&P500指数の時価総額上位10社で構成されています。
つまり、S&P500トップ10に採用されるには、S&P500指数に採用されている必要があります。
もちろん、S&P500指数の四半期ごとに行うリバランスよって除外された場合、S&P500トップ10からも除外されます。
また、S&P500指数は厳しい採用基準により銘柄選定をしています(以下表記)。
- 米国企業であること
- 浮動株が発行済株式総数の50%以上であること
- 4四半期連続で黒字の利益を維持していること
*時価総額はそれほど大きくなくても採用されます。
S&P500の採用基準についてこちらが参考になると思います。
上記の条件を満たす必要があるため、時価総額が大きくなったが、4四半期(1年)連続で黒字を出せていない企業は、S&P500指数に採用されません。
この厳しい条件のため、採用が遅れた代表的な企業としてテスラがあります。
テスラは、S&P500指数採用時過去最大の時価総額まで成長した後、2020年12月に採用されました。(テスラは2024年6月にS&P500トップ10からは除外=上位10銘柄から脱落のため)
これは、S&P500指数がテスラの成長による恩恵をいくらか逃したとも言えます。
銘柄採用基準の違い
一方、Zテック20は、米国上場のテクノロジー関連企業の時価総額上位20社で構成されるため(シュミレーションでの仮定ですが)テスラを2020年3月に採用、S&P500指数より”テスラ効果”があったと言えます。
逆に、エヌビディアに関しては、2001年当時無名でありながら、S&P500指数は採用基準を満たしたため採用(しかし、エヌビディアの急激な成長は20年後)、Zテック20は2017年3月採用しています。
このように、両者の大きな違いとして以下の2点があります。
- Zテック20は時価総額が大きい必要があるが(テクロジー関連企業20位以内)、S&P500トップ10(S&P500指数)はそれほど大きな時価総額は必要ない
- S&P500トップ10(S&P500指数)は4四半期連続で黒字を維持する必要がある
5. パフォーマンスに対して結論
結論として、マグニフィセント・セブン(Zテック20の上位7銘柄と同じ)、FANG+(Zテック20の上位6銘柄と同じ)に代表されるような上位銘柄(テスラのみ採否の違い)が今後も今までと同じような成長を続けるのであれば、パフォーマンスも同じくらいになるでしょう。
その場合のパフォーマンスは、
マグニフィセント・セブン>FANG+>Zテック20≒S&P500トップ10となるでしょう。
ただ、銘柄選定によって大きな違いが出る可能性があります。
Zテック20は、最新のテクノロジー分野を反映したポートフォリオを維持するため銘柄の入れ替えを重要視しています。
時価総額加重を採用している点は両ファンド共通ですが、採用基準によってその後のパフォーマンスに大きな違いが生まれる可能性があります。
特にテクノロジー関連企業は急激な成長を遂げるため、その採否が明暗を分けることになります。
(Zテック20に採用されるような)新たなテクノロジー関連企業が大きく成長した場合、
Zテック20のパフォーマンスがS&P500トップ10を上回るでしょう。
もし、非テクノロジー関連企業が時価総額上位に成長した場合(可能性はかなり低いですが)、
S&P500トップ10がZテック20を上回るでしょう。
安定感を求める方はS&P500トップ10、
革新的なテクノロジー関連企業の出現に期待する方はZテック20への投資が良いかもしれません。
もちろん、Zテック20も銘柄が定期的な銘柄入れ替えによって、固定、ほぼ固定でいずれも均等加重のマグニフィセント・セブン、FANG+よりは安定感のあるパフォーマンスを示すでしょう。
Zテック20 S&P500トップ10 比較 について総括
- 両ファンドとも時価総額加重を採用
- 両ファンドとも上位3銘柄は、アップル、マイクロソフト、エヌビディア
- さらに上位銘柄は同じ企業で、構成銘柄比率も近いウエイトである
- 共通上位銘柄が同じような成長を続ければ、同じようなパフォーマンスだろう
- 新たなテクノロジー関連企業が出現すれば、Zテック20のパフォーマンスはS&P500トップ10を上回る可能性大
- 安定感ではS&P500トップ10、革新的なテクノロジー関連企業の出現に期待するならばZテック20への投資推奨
- Zテック20も銘柄が定期的な銘柄入れ替えによってそれほどリスクは大きくない
*投資を検討する際には、自身のリスク許容度に合わせた判断を行うことが重要です。